立木教夫

「倫理」や「道徳」という語は中国古典に由来する言葉です。その意味で言えば、古代中国から導入された外国語です。 明治維新以降、近代西欧の思想が導入される過程で、新たな考え方を表現するために翻訳語が数多くつくられました。「倫理」という語は、ethicsの訳語として新たに翻訳されたものなのです。そのため、中国古典に存在していた「倫理」という語はethicsが内包する新たな意味を獲得して蘇った言葉なのです。 西欧からmoral scienceやmoral philosophyが導入され、それに伴って、従来の「道徳」という語はmoral, morals, morality等が内包する意味を新たに獲得し、蘇りました。しかし、「moral」に対し、「道徳」という訳語がすぐに確定したわけではないのです。